Your Goal
「あ〜あ、あいつへったくそだよなあ。」
「なんだよ打撃はすげーけど、守備はザルじゃん。」
十二支高校と黒撰高校との試合。
6回裏より攻勢に出た黒撰高校の勢いはすさまじかった。
唯一守備を苦手とするサード、猿野天国という穴をついて。
5点と言う大量の得点をもぎ取っていた。
そんな中、スタンドでは天国の酷評が流れ始めていた。
打者としての活躍がめざましかった分、守備の脆さが強調されたのもあった。
そして、それは偵察に来ていた華武高校でも同じ事。
「何だよ、あんな球落とすなんて信じらんねーな。」
「ハハハハ、あんなのがレギュラーってんだから十二支も底が知れてるって。」
大きな声で罵倒するのは、先ごろ3軍より戻ってきた2軍のメンバー。
「……。」
そんな先輩を見て、御柳はかすかに鼻で笑う。
(「あんなの」に点取られて2軍落とされたのは誰だよ。)
しょうもねえ、と御柳は視線を天国に戻す。
天国は、自分が守備の隙間となってしまったことに、大きく悔やんでいたが。
それでも、次こそ取ってやると言う意志を全身で見せていた。
そして、次の打者も天国に狙ってくる。
それに天国は必死で喰らいついていく。
(へったくそ…。)
なのに。
(何でそんなにきれーなんだよ テメーは。)
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「次の試合まで会えねえ?」
華武高校の第1試合が始まる少し前、御柳は天国から電話を受けていた。
『悪い、なんか急な合宿とかでさ。
次の試合の日まで戻れねえから。』
件の練習試合から、密かに会っていた相手。
御柳にとっては、いつのまにかダチではすまない存在になっていた。
だから、本選が始まって互いに忙しくなってても。
いつでも会いたいと願っていたのに。
御柳は憮然とする。
「つか、華武の試合見に来るっつってたじゃねえ?」
約束してたのに。
少し遅れて始まる華武の第1試合。
試合なら、偵察と言う名目で天国も来れる。
そうしたら、少しでも会えるのに。
そう思っていたのに。
『…ごめん。』
流石に天国も悪いと思っていたのか、素直に謝る。
だが、謝られたからと言って会えるわけでもない。
「サボれよ、んな合宿。」
天国にとって勝手な事を言っているのは分かってる。
でも、どうしても会いたいのに。
『そういうと思ってたよ。』
天国は御柳の言葉が冗談であるかのように笑った。
見かけによらず生真面目な天国が聞き入れるはずはなかった。
そんなことも最初から分かってる。
『でも、ごめんな。』
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8回表ツーアウト。
決死のスライディングで出塁した牛尾に続き、天国が出てくる。
「さ…猿野が出てきたぞ!」
何者をも寄せ付けない。
来る球を必ずうってやるという強い意志を見せる瞳。
その姿を、御柳は切なく見つめていた。
(…なんて眼してんだよ…。)